君の黒い髪が少し長くなりすぎたなら

 結局彼女のせいだとすると、自分に自信がないからで、そして僕のせいにすると、自信がありあまっているからだ。複雑な理由に見えたけれど、一言で言うならば、そういうことだった。それはAのせいか、Bのせい、あるいはAとBのせいだった。だからといって何が変わるわけではない。どんな理由であったにしろ、変わろうとしなければ変わらないし、行動しなければその理由にいつまでも縛られることになる。どんな種類のものにせよ、過去の自虐的、空想的な理由に安住することは自我にとっての温もりなのだ。
 君は崖を挟んで積年の理由の岸に立っている。しかし崖の向こうへ、対岸へ向かいたいと考えている。そして君は崖を超えようとする。意思は十分にある。しかし実際には超えられない。なぜなら君が超えないからだ。それは複雑な理由に見えるけれど、一言で言うならば、そういうことだ。
 実際に失敗することもあるだろう。しかし強い意志があり、強い意志を行為したいなら、失敗など据え膳のようなものではないか。僕らはそれすらも恐れている。偏執的で嘘のような恐れをである。